失われゆく日本の縫製技術をデジタル化する「ファッションデジタルツイン研究会」発足
各位
平素は、アズマ・ソーイング・コネクション(ASC)メールマガジンをご一読いただきまことにありがとうございます。
わたくしどもアズマ株式会社は、 株式会社FMB(代表取締役:市川雄司・東京都渋谷区神宮前) 、日本女子大学(家政学部被服学科)との共同研究により、洋服の縫製工程における縫製技術や型紙修正ノウハウなどの技術を画像で記録し、さらにその技術を可視化・数値化してデータ分析をする研究会「ファッションデジタルツイン研究会(以下、FD2研)」を発足し、2023年3月15日から研究を開始しました。
デジタルツイン(DigitalTwin)とは、現実の世界から収集した、さまざまなデータを、まるで双子であるかのように、コンピュータ上で再現する技術のことです。(https://www.ntt.com/bizon/glossary/j-t/digital-twin.htmlより引用)

〈研究会発足の背景〉
1990年には、衣服における輸入浸透率は23.6%であり、国内生産が大多数を占めていました。(経済産業省のデータより)しかし、2021年には98.2%まで増加し続け、国内生産した製品の流通割合は非常に少なくなっています。
この衣料品の自給率低下は、日本の量産縫製工場の減少を表しており、バブル以前に高い量産縫製技術で世界中のファッション業界から評価を受けてきた日本の縫製技術が失われていくことにもつながっています。
〈FD2研で目指すべき成果〉
1 量産工場における型紙修正量と素材物性数値データの関係性を定義
2 素材物性データと1の関係性を表す計算式を導く
3 ファッション3D モデリングソフトにおける素材物性パラメータの数値と1,2の素材物性データの関係性を定義
4 量産工場で行う修正量を組み込んだ精緻な3DCG 制作方法の確立
〈研究成果がファッション産業に与えるインパクト〉
1 量産における「先上げサンプル」の確認作業の短縮(生産リードタイム短縮・輸送コスト削減など)
2 ファッションDXの実現…3DCGの確認だけで量産にかかれるサプライチェーンへの変革
3 日本の持つ高度な縫製技術を次世代へ継承(教育への落とし込みなど)
4 3Dモデリング技術で制作する3DCGのリアルさの向上
・私どもアズマは、現実の衣服ものづくり(設計から縫製等加工仕上げ)の課題を再現します。弊社顧問であり文化ファッション大学院大学(略BFGU)名誉教授 稲荷田征氏のもつ生地の特性をパターンに反映させる技術や縫製技術など洋服の製品化に至るまでのあらゆるノウハウの提供を行います。他スタッフに佐藤順子氏(婦人服製造現代の名工)、鈴木好夫氏(紳士服製造マイスター)などの技能者が協力します。また、研究会の場所として弊社内の工房や量産用ミシンなどの設備を提供します。
・ファッション3DCGの制作において世界トップレベルの制作ノウハウを持つ株式会社FMB
FD2研の研究テーマや進行管理や取得データの分析、縫製ノウハウの映像化、研究結果を3Dモデリングへ反映します。
・創立120周年を迎えた日本女子大学の家政学部被服学科材料学研究室
衣服シルエットのシミュレーションをする3Dモデリングソフト「STYLE3D」「CLO」「BROWZWEAR」などに入力する物性パラメータと、KES-FB風合い計測システムやJIS規格による生地物性との関係性を明らかにします。

今回のFD2研を通じて、日本の高い縫製技術を可視化・数値化し、次世代への継承を目指します。また、数値化した技術をファッション3D モデリングへ活用することでファッション産業の変革を推進してまいります。