第10回 「ミシン糸 張力測定の記録・可視化の実現」

この度の東日本大震災により被害を受けられました皆様に、心よりお見舞い申し上げます。皆様の安全と一日も早い復旧を心からお祈り申し上げます。

============************==========

≪ アズマ? メール・マガジン 10号 ≫
    
<ミシン糸 張力測定の記録・可視化の実現>
                         平成23年8月19日

今まで、生地・針・糸等の相性・調整などを経験と勘で行っておりました。
この「糸張力測定装置」では、記録・可視化をすることができます。
弊社で糸・生地等をお預かりして、最適と考えられるミシン設定・糸選択設定、計測データをお届けできます。 
縫製不調の原因解決の一環としてこの装置による分析は有益です。
ぜひ皆様と共にデータ解析等に活用して最適な縫製を実現し、効率化を図っていきたいと思います。
ミシン糸も素材、種類、染料、オイリング種別・条件等々計測を行い、問題解決して参りたいと考えております。
皆様からのお問合せをお待ちしております。

**********************************

「糸張力測定装置(デジタルテンションメーター)」


1.開発目的
薄く織られた生地、細い糸で織られたオーガンジー、コーティングされた布地のように縫製困難なテキスタイルやニットが、次々開発されています。
そのような素材を美しい製品とするのに、勘と経験だけで対応するには、かなり困難な現状があります。いままでは、糸調子の重要な要素である、縫糸の張力測定には、バネ式テンション・ゲージを使用するしか無く、はなはだ曖昧で現実的には、作業員の経験と勘に頼らざるをえませんでした。
(弊社メルマガ第6号参照)
【知的縫製研究会】にて、この曖昧さを無くすべく、デジタル化・数値化できる機器が開発されました。
一定の条件の下で、ミシン糸の張力設定を再現する事もできる測定装置です。

特 徴
 ・測定数値がデジタル表示され、記録されます。
 ・表示を見ながら、下糸・上糸の張力設定が出来ます。
 ・糸が動いている(=動摩擦の)状態で、張力測定されます。
 ・USBでPCに接続して、データの記録が容易です。
 ・PC上でのグラフ化により、分析対象の把握・比較が容易になります。
 ・縫製作業のミシン糸の張力管理に最適です。

お勧め
 ・試し縫い、見本縫いのミシンの糸張力を数字で測定・記録する事が
  できます。
   海外の工場などでの、製品安定・品質向上に使用の実績があります。
   協力工場への縫製指示が、具体的に可能になります。

 ・職人技を、数値化して保存できます。
   記録された最適な糸張力値に合わせることにより、同条件に近い再現
   が可能になります。

2.標準的使用法

○下糸張力の測定
普通本縫ミシン用ボビンケースに入れた下糸を、使用に最も近い状態で測定出来ます。
測定しながら、ドライバーを使い、ボビンケースのテンション・バネを調整して設定することもできます。


       [下糸張力 測定 画像]       

○上糸張力の測定 
◎本縫ミシンは、下図のように、上糸の張力を測定します。
  糸の通し方は、ミシンメーカーの標準が望ましいです。
  工場の統一標準があれば、それでも可です。

       [上糸張力 測定 画像]

※デジタルテンションメーター小売価格198,800円/台

150gf以下の糸張力を、直接測ることが出来ます。
ロック等 環縫ミシンの大半 など。

☆「縫い糸の滑り」比較分析

 ・比較分析ですので、固定された糸調子(テンション)圧で、全ての
  対象ミシン糸を計測します。
  (「上糸張力の測定」に準じますが、【糸取り(ピンピン)バネ】は、
    通さない方が原則です。)
 ・1種1本測定の場合は、同種類(Petフィラメント:Petスパンなど)、
  同じ番手(#30:#60など)の糸を基準として比較測定します。
 ・測定は3段階以上のテンション設定で測定します。

今回は、3段階のうち、1段階のデータのみ結果を表示しました。

■ 実際の測定結果の、1段階のみの一例です。
 (基準糸:複合糸Bを25gになるように、負荷を設定した場合のみ。)

◎計測値グラフ化

各タイプの糸の分散値や平均値が自動計算されます。
その結果、複合糸Bの最小値及び平均値が小さく、分散値が小レベルだったので着目し、以下の通り特性をまとめてみました。

(複合糸B)=『ACECROWN HYPER® -SOFT』

ハイパーソフトミシン糸は、文化ファッション大学大学院テクノロジーコースを中心に産学協同研究により、開発されたミシン糸です。「デジタルテンションメーター」を使用して縫製条件のデータ化と縫い目バランスの良い縫製研究条件の法則を研究致しました。    
    
○開発目的
熱セット性、収縮性に優れる帝人のハイパー原糸を使用
・やわらかい、薄い素材に対応したい。

○開発評価
 先に行われた岐阜産業技研センターの知的縫製研究会で、文化ファッション大学院大学の稲荷田教授より、ハイパーソフトで縫製・加工された写真や現物を見ながら、ハイパーソフトの特性説明と、使用制作した製品を現物で紹介しました。撚りを既存より甘くし、スナールがほとんどなく非常に縫いやすい。優れた平滑性と耐熱性でミシン調整の幅が広く一度設定されると乱れが少なかった。非常にきれいに縫いあがっていました。フィラメント糸(ハイパーソフト含む)は、スパン糸より細い針を使用でき、上糸・下糸ともに張力変化がすくない。また、毛羽が無く糸の太さが安定しています。

参考:縫製条件「デジタルテンションメーターで測定」
  下糸張力  5g
  上糸張力 30g(上糸張力は下糸張力の5〜6倍)
  ミシン回転数 1600回転
   ☆2010年12月1日 アパレル工業新聞掲載

≪編集後記≫*********************
前任の浅川から引き継いで弊社縫製研究室メールマガジンを編集いたしました鵜木と申します。
浅川は休職をしておりましたが、現在、非常勤として原則週1回出社しております。
物作りのサポートとして、縫製研究室では、お客様よりお預かりした生地の試縫い等をいたしまして、その素材に合った、縫製条件などの提案をさせて頂いております。(原則手数料はいただきません。)浅川が非常勤ですので、従来どおり即応は難しいですが、浅川へ取次ぎをいたしご返答いたしますので、若干ご迷惑をおかけいたしますが、今後とも変わらずご愛顧くださいますようよろしくお願い申し上げます。 

   メールによる 各種 お問合せ・お申込(含:縫製研究室) 
   http://www.azuma-jpn.com/cgi-local/feedback/mail/form.cgi

        平成23年8月19日   アズマ株式会社 生産課 鵜木 隆嘉

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。