第13回 和紙布とは何か、和紙の縫糸は可能か

≪ アズマ? メール・マガジン 13号 ≫

<目次>
第1章 和紙糸による織布の特徴

第2章 和紙糸のつくり方

第3章 和紙糸【混紡】で作られる製品

第4章 縫製糸としての和紙糸

第5章 強伸度試験機 測定結果

           
以前から綿、麻、絹、毛などの天然繊維に興味を持っておりましたが、
今回のメールマガジンの題材を旬なところでエコロジー、環境、日本を
テーマで取材をしていたところ和紙が浮上してきました。
数年前から織布に和紙の糸を使用した製品が目に着くようになり、
和紙糸の布地について調査・分析をしたいと考えますが、
ミシン糸(縫製糸)としての和紙糸の可能性についても挑戦準備しております。

第1章 和紙糸による織布の特徴
「紙」と聞くと水気に弱い、使い捨ての材料、粘りが無く「硬い」、などの
イメージを持たれる方が多いと思います。
ところが最近は、和紙糸の織布やニット地の普及に伴い、
一概にそのような性質ばかりでは無いという事が、徐々に認識されてきたように感じます。
ただ、和紙のみではなく、混紡の形式で製品化されることも多いようです。

「 特 徴 」
1.通気性が非常に良い。
2.他の繊維に比べて非常に軽い。
3.毛羽がなく綺麗な糸になる。
4.吸水性・吸汗性に優れている。
5.乾燥性・発散性に優れている。
6.元が紙なので染色性に優れている。
7.天然繊維なので焼却も問題なく自然環境に優しい(和紙糸は地中では分解されます)

● 「糸」単体になると、やはり縫糸としては柔軟性に乏しく、
縫う時の、「こすれ」や「折れ」に弱いという思いはあります。

第2章 和紙糸のつくり方
1)代表的な作り方は、和紙を1〜30mm程度の幅にテープ状に切る。
  その素材を、紙縒り(コヨリ)と同じように、撚り、糸状にします。
  勿論、紙厚とカット幅により太い糸、細い糸が作れることになります。
  そのまま、単糸で使用したり、撚り合わせて使用します。
  合繊糸などと、撚り合わせれば、【混紡】になります。
2)レーヨンのように、溶融させて糸を作る方法もあるようです。
  この方法では、パルプの代わりに和紙を原料にするだけなので、
  既存のレーヨンや、テンセルと大きな差が出ないと考えます。
  ただ、引張強力にデータの差は出る可能性はあります。
3)1)と2)の中間で、1)の和紙を漉く際に、他の繊維を混ぜ【混紡】
  とし、カットするテープ素材を改質する方法もあると聞いた事がありま
  す。

 今回は、1)または3)の素材を分析していきたいと思います。
     2)の素材も、入手できれば対比したいと考えています。

第3章 和紙糸【混紡】で作られる製品
 和紙糸の製造において、混紡されることもありますが、織布では、一般に
 行われているように、織る時に、混紡にすることも多いです。

 1.紳士服        2.婦人服
 3.和服         4.T−シャツ、キャミソール等
 5.リネン類       6.靴下・手袋類
 7. バスマット
    等々、繊維製品を作ることが可能です。
   「和紙織」「和紙ニット」などを検索すると多数の製品映像が、
    出て参ります。
    ただ、糸そのものの伸びは、かなり乏しいので
    伸度の大きい糸との組み合わせは、相性が悪いと思います。

友人に、和紙織布にて製品を生産している方がいらっしゃったので、
どのような作りの和紙織布(ニットです)を使われているかお聞きしました。
 詳細は不明と前置きされ、お札と同じ和紙の材料(三椏(ミツマタ)+麻)を使用しているとのお話しでした。また、素材によっては溶融繊維(レーヨン、テンセル)を混ぜ込む事も有るとのこと。
ただし、「綿」は、和紙原料になじまず、漉き込む事は出来ないとのこと。
漉き方は、コスト・量の問題もあり、必然的に機械漉きです。

第4章 縫製糸としての和紙糸
  和紙糸織製品がこれだけ市場に出れば縫糸も和紙の糸を使って、
  和紙製品を縫製加工する事ができれば、よりその特性が生かせるのでは
  ないだろうか。糸と織布の親和性も上がるのではないだろうか。
  硬さや風合い、強度などのバランスも取れるのではないだろうか。
  どんな染料でも染まるのではないだろうか。などの可能性が
  広がってきました。 

  幸い和紙を取り扱う備後撚糸株式会社様より、
  和紙糸の提供がいただけました。
※ ご提供糸:1240 Z 720T/M(4mm幅の和紙を720回/m撚ったもの)
  この糸を利用させていただき大貫繊維株式会社・シルク課様にて
ご協力いただき、以下の糸を試作し、縫製糸としての可縫性について
分析してみたいと思います。    
  
1)和紙の2本撚り糸。
2)和紙の3本撚り糸。
3)和紙とスパン糸を撚り合わせた糸。
   
今回の試験縫製までに、完成したのは、
1)和紙の2本撚り糸。
  「オイル無し」糸は、撚りが大変困難で、少量しか制作できませんでした。
  「オイル添加」糸にすることにより作る事ができました。
  今回の 試し縫いと、強伸度試験機測定は、当該「オイル添加」糸を使用します。
   見た目ですが、太さは スパンの#20よりは細く、テトロン#8よりは、太い。
   針は、シンガー法により選択します。
  「観察」では、伸度は無いが、「オイル無し」糸と比べ、「オイル添加」糸は、
明らかに滑らかで、特に、柔らかい(しなやか)。

≪試縫い≫ =====〜〜〜〜〜*****〜〜〜〜〜=====
 三菱 LS2–180  
 針 DPx5 #21 (シンガー法で選定)
 生地 ? 綿カツラギ:厚物   ? 中厚ストレッチ
  糸に、伸度が無い事に配慮し、下糸には伸度のあるソロスパン#20を試してみる。 
? 綿カツラギ:厚物 
  特に、ソロスパンを使う必然はありませんでしたが試してみました。
糸調子は予想通り不安定でした。やはりこの布では、スパン#30が
妥当だと考えます。高速縫いは行いませんでしたが1300回転(推定)程度の、中速縫いは可能でした(下記写真参照)。


 
    
? 中厚ストレッチ
 下糸にソロスパン#20を使用。スピード変化により
やや不安定になります。
しかし、ストレッチ素材でも伸度のある下糸により、かなりの所まで
追従しますので実用性はあると考えます(下記写真参照)。

 ※ソロスパン#20 強度:1370.5(gf) 伸度:56.6%

 ◎ 縫製糸としての問題点。
1)和紙糸は、高速性に乏しいのと太い糸しか造れない。また糸も、強度・伸度に
乏しいので、地縫い糸としては難しくステッチ糸的な使用を推奨したい。
2)縫製糸として、最も懸念されるのは、縫製時の糸の解き方と考える。
今回の試作糸は、ボビン巻仕様になっていたので、並行にしか解けない。
その為、大きな問題にはならなかった。
しかし、コーン巻きにして端から使うと、キンクが簡単に発生し、
糸の解けに従い、かなりひどいことになる事が予想されます。
この点については、再度研究の余地があるようです。
和紙の3本撚り糸、和紙とスパン糸を撚り合わせた糸についても、
研究を続けていきます。

第5章 強伸度試験機 測定結果
     平均 強度:1190(gf) 伸度:5.4%
     添付ファイルを参照下さい。
  130410 和紙縫糸 (双子,ST=OIL).pdf ←ここをクリック

≪編集後記≫*********************
弊社縫製研究室メールマガジンを編集いたしました森田と申します。
今回研究させていただいた和紙の縫い糸は、まだ商品化されておりませんが、
皆様のご意見もいただきながら創意工夫してまいりたいと思います。
また、縫製研究室・浅川は5月より常勤から非常勤となりました。
浅川へのお問い合わせについては森田を窓口とさせていただきますので、
ご遠慮なくお申しつけください。
今後とも変わらずご愛顧くださいますようよろしくお願い申し上げます。

平成25年5月7日 アズマ株式会社 企画開発課 森田達也
                   縫製研究室 浅川幸夫