第37回 第二部 「横振り刺繍とは糸で描く芸術だ!」

≪アズマ 縫製研究室 メールマガジン 第37号≫ (第二部)

今回当メールマガジン編集担当の弊社足利営業所が、地場である群馬県桐生市で産地の刺繍に関してスポットを当ててみました。
皆さんは桐生発祥の横振りミシン・刺繍をご存知でしょうか?
横振り刺繍の第一人者であり、現代の名工である大澤紀代美(おおさわ きよみ)先生から刺繍に関する事の取材を行いました。
先日、日本テレビで放映していた「笑ってこらえて」にご出演されていたのでご存知の方も多いかと思います。

1.横振りミシンとは
・起源は100年以上前に遡ります。
もともとは千鳥ミシンを刺繍用に桐生市の職人さんが改装を行い、ミシン針が横に振れる事から「横振り」と言う名称になったそうです。

(写真① 横振りミシン 左画像:ワッペン用、右画像:柄出し用
用途により針の振り幅が異なる)

・縫製用ミシンと異なり、送り歯が無い事で、上下左右自由自在(刺繍枠の範囲内になりますが)な動きが可能で、肘から先をダイナミックに動かし、様々な角度から縫い上げ、仕上げていきます。

また1色の糸でも縫い方向を変えればグラデーションに魅せることが可能で、1つの作品に多くの色糸を使用する事が無い場合もあり、その人独自の柄、味を出すことが可能です。

(写真② 同じ緑色の糸。
2方向から描く事で光の反射が異なり違う色に見える)

 

 

 

 

 

2.手振り刺繍・コンピュータ刺繍との違い
・横振り刺繍はよく、手振り刺繍と混合されますが、先ほど横振りは肘から先の動きとお伝えしました。

・一方、手振り刺繍とは、手首から先を動かす(刺繍枠が小さい)事を言います。主にネーム刺繍を行う場合の用途が多くなります。

また、横振り刺繍をキャンバスに筆で描くと例えるなら、コンピュータ刺繍は印刷。
均一の柄や文字を刺繍する場合の仕上がりに適しております。
量産に向いている為、工場では多頭式が多く稼動しております。

(2019年9月のFISMA TOKYOより、
上図:バルダン様、下図:田島ミシン様多頭式刺繍ミシン)

3.刺繍を楽しみたい方向け

・横振り刺繍は何年も修行をして会得する技術に対して、先ほどお伝えさせて頂いたコンピュータ刺繍ミシンを用いれば誰でも刺繍を楽しむ事が出来ます。
ミシンに関しては、一般ユーザー様向けに家庭用刺繍機、店舗・販売店様向けには、業務用刺繍ミシンをご提案致します。

業務用刺繍ミシンの使用例としましては、店頭で購入して頂いたシャツ、帽子、鞄などその場で名入れが可能で、その他、自分で取った写真や手書きの画像をミシンに取り込み、刺繍として出力(ミシンにセットする糸の色数には限りがあります)可能なタイプもございます。
もちろん弊社ではパールヨット、エンゼルキングなどの刺繍糸の取り扱いをしております。刺繍糸に関しては各社数千色にも及び、表現の幅が多彩です。

ご案内
刺繍糸(パールヨット・エンゼルキング 他)
不織布(ハイボン・マツボン)
寒冷紗(白・黒)
フィルム(熱剥離タイプ・水溶性タイプ)
ロー紙 等の販売を行っております。
その他、資材の使用方法等トータル的に情報をご提供させて頂きます。

 

4.大澤先生の横振り刺繍一部作品

・刺繍とはいかに糸を化けさせるか、刺繍時の方向や強弱の付け方等の
技術を用いる事により、作品ごとの魅力が異なります。
これらの表現方法によって、1つの作品を作っていきます。
まさに、「横振り刺繍は糸で描く芸術」という訳です。

写真④(ジミーペイジーの横振り刺繍。
演奏の力強さを背景に映し出している。)

 

写真⑤(ウサギの横振り刺繍。
白糸をマット(つや消し)にする事でリアルな毛並みを表現。)

 

写真⑥ 龍の横振り刺繍。
周りの雲、雷をぼかすことで、龍が引き立つ。

5.横振り刺繍の今後について
横振りが出来る人口は本当に少なくなっているそうです。
それは縫製業界の衰退なども関連してきますが、まず技術継承が出来ていないこと。
そして職人(ミシンの製造・周辺付属の生産)が不足していること。

○先生からは
「今後は会社毎の垣根を越え、連携・結束しお互いを補える環境作りに向け街をあげて行う必要性がある。
繊維の産地では、織物、縫製、刺繍、染色、糸屋等、繊維に関する全てが揃っていて、特に桐生ではその環境が整っている。
1つの仕事が地場で完結出来る。
小ロット対応はもちろんの事、量産対応も可能になり、お互いの相乗効果を得て
更なる発展に向けた動きに繋がる。
これからの未来は難しい部分もあるが、それこそが成長できる楽しみに繋がっていくのではないか。」と、IT化が進む中、アナログも活用しながらこの業界を引っ張っていくと言う先生の決意・熱意を感じました。
弊社は、様々なお取引先様のお陰で、成り立っております。
物の提供だけでなくコトにも注力し縫製・ITを融合させた提案を進めて参ります。

 

取材協力 大澤紀代美先生

1945年桐生市生まれ
17歳から刺繍に携わる。
桐生刺繍商工業協同組合理事相談役、
桐生商工会議所会員、桐生繊維大学講師、
群馬県伝統工芸師、現代の名工、黄綬褒章。

桐生繊維大学の講師を勤められており、業界指導の傍ら10数名のお弟子さんが日本全国から集まり、技術・精神面を指導。
横振り刺繍の普及・技術・魅力を伝える為、一般のお客様以外にも、各市町村、各メディアに出演し情報発信・スピーカーとして次世代に繋げる活動を行っている。

桐生商工業会議所(弊社販売代理店、㈲平野商店様、高田㈱様)の皆様。
ご多忙中の所、貴重なお時間を頂きまして有難うございました。

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